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湿板写真(アンブロタイプ・ティンタイプ)の原理

  • 執筆者の写真: esfahanchaihane
    esfahanchaihane
  • 2023年1月1日
  • 読了時間: 4分

更新日:2025年12月18日

※以下は、湿板写真の原理を説明するための一般的な工程解説です。実際の制作では、安全性や管理のしやすさを考慮し、材料や方法を選択しています。



「塩化」コロジオンの塗布

湿板写真で使うプレイン・コロジオン(未調合のコロジオン)は、主にニトロセルロースをジエチルエーテルとアルコールに溶かした透明な溶液です。


このプレイン・コロジオンに、ヨウ化物や臭化物といった「塩(えん)」を加えると、塩化(= salted)コロジオンになりますここでいう「塩化」とは“塩素を加える”という意味ではなく、「塩(=ハロゲン化物)」を溶かして調合したという意味です。

湿板写真では、この塩化コロジオンをプレート(ガラス板やアルミプレート)に塗布することから始まります。また塩化コロジオン自体は感光性を持ちませんが、次の工程で感光性のあるハロゲン化銀が形成されます。

※上記以外の塩を用いるコロジオンレシピも複数あり、調子の現れ方が微妙に異なります。

 

銀浴(プレートの感光化)

塩化コロジオンを塗布したガラス板を硝酸銀の溶液に浸すことを銀浴といいます。銀浴時には塩化物イオンと硝酸銀の間で以下のような置換反応が起こり、ハロゲン化銀が生成されます。

-硝酸銀 + 臭化カドミウム → 臭化銀 + 硝酸カドミウム

-硝酸銀 + 沃化カリウム → 沃化銀 + 硝酸カリウム

※臭化物は色調範囲を広げ、沃化物はコントラストを高める役目を果たします。

 

これらのハロゲン化銀(臭化銀、沃化銀)が感光性を持つ物質となります(副産物である硝酸カドミウムと硝酸カリウムは硝酸銀溶液に溜まり続けると、やがて画像形成に悪影響を及ぼすので定期的に除去する必要があります)。

置換反応は約2~4分で完了します。これにより、プレート上にハロゲン化銀を含んだ感光層が形成されます。

 

撮影

撮影(露光)はカメラで行われます。

プレートをカメラにセットし、光を当てると、光子がハロゲン化銀を銀の原子に還元します。これは主に光の当たった部分で起こります。この反応によって、露光された一部分に銀の塊が形成され潜像が作られます。ただし潜像は目には見えないので、銀粒子を増やすために現像をする必要があります。


現像

現像液(還元剤)は主に硫酸鉄(II)、酢酸、アルコールが主成分で、プレート上の化合物に電子を与える役割を果たします(この場合電子を受け取るのは銀イオンとなります)。すでに撮影時に金属銀になった塊と残りの銀イオンが、現像液に接触することで多くの反応がおこり、より多くの金属銀が生成され、可視化されるようになります。

また現像液の量が少ないほど銀の反応は濃縮され、ハイライトが明るいコントラストのある画像が得られます。

 

定着

現像後、定着液を使用して未露光のハロゲン化銀(撮影時に陰になっていた部分)を溶解します(定着液がハロゲン化銀を水に溶けやすくします)。これにより、露光された銀の微粒子だけがガラス板上に定着し、画像が形成されます。一般的に定着にはハイポ(チオ硫酸ナトリウム溶液)を使いますが、湿板写真が盛んだった19世紀には、定着にシアン化カリウム(青酸カリ)が用いられていました。

現在でも、海外の一部の写真家が歴史的手法として使用している例があります。シアン化カリウムを定着に使うとコーヒー色(暖色系)の仕上がりとなるのと水洗時間が短くなるというメリットがあります。

 

水洗

定着後のプレート上の画像や特にエッジ付近に白っぽいシミが付着していることがあります。これは未露光のハロゲン化銀が現像されてしまった余剰銀なので、膜面が傷つかないようにコットンボールで取り除いていく必要があります。

水洗はハイポ(チオ硫酸ナトリウム溶液)を使った場合は最低でも20分行う必要があります。シアン化カリウムを使用する場合は水洗が5分程度でよいとされます。基本的には、絵柄の影未露光のハロゲン化銀)部分がクリアになった時間の倍の長さを定着時間とします。

 

ニス

水洗と乾燥後、ガム・サンダラックや水性ニスなどのコーティングを行います。ニスは銀を保護し、湿板写真の美しさを長く維持する役割を果たします。




 
 

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