湿板写真は“銀塩”なの?そもそも銀塩写真って何?
- esfahanchaihane
- 2025年5月29日
- 読了時間: 4分
写真好きの間では「銀塩写真」や「フィルム独特の質感」といった言葉を耳にすることがあります。デジタル全盛の今でも、銀塩写真ならではの味わいに惹かれる人は少なくありません。
実は、私が撮影やワークショップで扱っている「湿板写真」も、銀塩写真の一種です。それも、もっとも初期段階の銀塩写真と言える技法です。 この記事では、「銀塩」とは何か?なぜ“銀”なのか?「塩」は食塩とどう違うのか?そして湿板写真との関係までを、できるだけ分かりやすくご紹介します。(本記事はモノクロフィルムや印画紙の話が中心です)
「銀塩写真」とは?
「銀塩写真」とは、銀とハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)の陰イオン(Cl⁻、Br⁻、I⁻)が結びついたハロゲン化銀を感光材料に使った写真技術です。
これらの元素は周期表の17族に属する非金属で、いずれも光に反応しやすい性質をもちます。この性質が、銀と組み合わせたときに感光材料として優れた働きをする理由のひとつです。
フィルムや印画紙には、このハロゲン化銀が塗布されており、光を受けると化学反応で像が記録されます。
「塩(えん)」ってなに?
「塩(えん)」とは、化学で使う言葉で、「金属」と「非金属」のイオンが結びついた化合物のことです。
たとえば、私たちが普段使う食塩(塩化ナトリウム)は、ナトリウムイオン(Na⁺)と塩素イオン(Cl⁻)がイオン結合してできています。 銀塩写真の場合は、「銀イオン(Ag⁺)」と「ハロゲンイオン(Cl⁻、Br⁻、I⁻)」が結びついた**ハロゲン化銀(塩化銀や臭化銀など)**が使われています。
つまり、銀と他のイオンがイオン結合でできる「塩(えん)」を利用しているため、「銀塩写真」と呼ばれるのです。

豆知識
ちなみに、写真の古典的なプリント技法である鶏卵紙やソルトプリントでは、紙に食塩水を染み込ませ、硝酸銀を塗布することで塩化銀を生成し、それを感光材料として使っています。
このように、「塩(えん)」の性質を利用した技法は、写真の歴史の初期からさまざまな形で発展してきました。
銀塩写真が写る仕組み
露光(感光)
フィルムや印画紙のハロゲン化銀が光に反応し、「潜像(目に見えない像)」が記録されます。
現像
薬品で光に反応した部分の銀が黒く変化し、像が浮かび上がります。
定着
未反応のハロゲン化銀を洗い流し、像が消えないように固定します。
フィルム写真と銀塩
銀塩写真では、まずフィルムに「ネガ像(明暗が反転した像)」が記録されます。
このネガを印画紙に焼き付けることで、「ネガのネガ」=明暗が元通りのポジ像(写真)が得られます。 フィルムも印画紙も、どちらもハロゲン化銀を利用しており、「銀が光に反応して黒くなる」原理が共通しています。
湿板写真も銀塩?
はい、湿板写真も銀塩写真の一種です。しかも、19世紀中頃に登場した「もっとも初期の銀塩写真」と言えます。 湿板写真(コロジオン湿板)は、ガラスや金属のプレートにコロジオンという液を塗り、そこにハロゲン化銀の感光層を作って撮影します。
この感光層が光に反応し、銀の粒子が像となって現れます。撮影後すぐに現像・定着することで、プレート上に銀でできた画像が完成します。
湿板写真は、フィルムのような柔らかい素材ではなく、ガラスやメタルプレートという硬くて平滑な支持体を使うため、極めて繊細な描写や独特な存在感が生まれるのも、魅力のひとつです。
なぜ「銀」なのか?
写真術の黎明期には、さまざまな感光材料(アスファルト、鉄、プラチナなど)が試されましたが、
銀は光に対する感度が高く、繊細な描写力と安定した保存性を兼ね備えていたため「写真材料のスタンダード」として定着したのです。
また銀の粒子はきわめて細かく、光の微妙な濃淡を美しく再現できるため、湿板写真では独特の金属的な美しさも生まれます。



おわりに
「銀塩写真」は、銀の化学反応を使って像を記録する技術です。湿板写真は、その原理を利用したもっとも初期の銀塩写真のひとつ。
デジタル全盛の時代にあっても、光と化学が織りなすこの仕組みには、特別な奥行きと美しさがあります。写真が「ただの画像」ではなく、物質として生まれ、定着していくプロセスに触れることで、私たちは“写す”という行為の意味を、もう一度見つめ直すことができるのかもしれません。

もしこの記事を読んで銀塩写真や湿板写真に興味が湧いたなら、ぜひ実際にその世界に触れてみてください。画面では伝わらない魅力が、そこにはきっとあります。
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