湿板写真のポジとネガ
- 2月26日
- 読了時間: 3分
更新日:2月28日
湿板写真には「ポジ」と「ネガ」という二つのかたちがあります。湿板写真と検索すると、ガラス写真(アンブロタイプ)が出てきたり、ティンタイプが出てきたり、昔の紙焼き(鶏卵紙)が出てきたりします。どれも湿板写真ですが、見た目が異なるため、少し混乱するかもしれません。
実は、湿板写真は大きく「湿板ポジ」と「湿板ネガ」に分けられます。

この分類を知っているだけで、湿板写真の見え方は少し変わります。
湿板ポジ
アンブロタイプやティンタイプは「湿板ポジ」に分類されます。 アンブロタイプとティンタイプの違いについては、別の記事で触れています。
黒い背景の上で見るとポジ像のように見えますが、実際には薄いネガです。
薄いネガが黒に支えられることで、ポジ像が立ち上がります。 その仕組みは、見慣れてもなお、不思議さが残ります。
そして何より、その板そのものが完成形です。 複製を前提とせず、ガラスや金属板という物質が、そのまま最終仕上がりになります。
一枚で完結します。
湿板ネガという役割
一方で、湿板ネガというものもあります。
こちらは紙焼きを作るためのネガです。アンブロタイプのように薄い像では、紙に焼き付けたときに十分な階調が出ません。紙焼きには、より濃いネガが必要になります。
ネガが「濃い」とはどういうことか。

アンブロタイプを光にかざすと、向こう側が透けて見えるほど薄いです。けれど紙焼き用の湿板ネガは、黒い部分がほとんど光を通しません。明るい部分だけが抜けていきます。この“光の通し方”の違いが、濃度の違いです。
湿板ポジとは異なる撮影や現像を行うことで、この濃さが生まれます。ネガがしっかり光を遮ることで、紙の上に像がくっきりと現れます。
以下は、同じ湿板ポジ(の背面に黒布を配置したアンブロタイプ )、湿板ネガ、そしてそのネガから制作した紙焼きのスキャン画像です。

同一人物であっても、アンブロタイプと紙焼きでは、像の佇まいがどこか異なって見えます。見るためのネガと、焼くためのネガ。同じ湿板でも、作り方が違います。紙焼きは紙の質感が写り込んでいるのが特長的です。
鶏卵紙の世界
湿板ネガから生まれる代表的な紙焼きが、鶏卵紙です。卵白を用いた感光層に焼き付けることで、柔らかな光沢と豊かな階調が生まれます。一枚のネガから、複数の写真を作ることができます。それは当時、写真を広めるための大きな役割を担いました。
実際に明治時代に作られた鶏卵紙を見ると、その質感や階調の豊かさがよく分かります。

19世紀には、複製できることが写真の重要な役割でした。
しかし、今日では画像を増やすこと自体に特別さはありません。
そのなかで、一点で完結する湿板ポジは、特別な意味を帯びてくるのです。

湿板写真の技法について → 湿板写真とは
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